あなたの銃の「本当の性能」を正しく知るために。フォートレス式ゼロインマニュアル

みなさんがサバイバルゲームでエアガンを使うとき、光学サイトを使う機会も多いはず。そしてもちろんサイト調整もバッチリ…だとおもいますが、いかがでしょう?
正しいサイト調整は、サバイバルゲームを楽しむ上で銃の性能と同じくらい、いやそれ以上にとても重要です。
そこで、このコーナーでは「フォートレス式ゼロイン」の内容を大公開します!
またこれまで数多くのカスタムガン開発テストでも、同じ方法で飛距離や有効射程距離を計測してきました。ただの「サイト調整」にとどまらず、飛距離や有効射程距離の比較をする際には、ぜひとも参考にしていただければ幸いです。

「ゼロイン」とは?

簡単に訳すとすれば「照準設定」とか「サイト調整」という意味です。たとえばスコープならば十字の線(レティクル)が交わるところに弾丸が到達するように照準を設定することです。
しかし実銃でもエアガンでも、標的までの距離が違えば命中する点もずれるため、本来はそのつど狙う距離に応じて設定する必要があります。

このコーナーではサバイバルゲームでの使用を前提として説明します。またエアガンのHOP弾道では百発百中の弾道は求められません。あくまでも「ゼロインができたエアガン」なら、いつでも「狙ったあたりに弾が飛ぶ」ための調整だとご理解ください。
用意するもの:メジャー、標的、直線で50メートルぐらいとれる平地

正確な距離を測る「メジャー」、サイトの狙点を決めるための「標的」、そして高低差のない直線がとれる「平地」。
つぎの2つの大原則に従うためには、これらが用意できないと正しいゼロインはできません。


ゼロインの大原則その1「ターゲットは銃口の高さに設置すること」

高低差は正確な距離がとれない正しい飛距離や弾道を確かめるためには、ターゲットを水平に狙うのが原則。できる限り高低差をなくして銃口と同じ高さに標的を置くためには、やはり高低差のない平地が必要なのです。

【コラム】ゼロインは「伏せ撃ち」で。標的の高さもそれにあわせよう

サテライトのゼロインマットがオススメゼロインは原則として「伏せ撃ち(プローン)」で行うのが理想です。
まずなにより銃を安定させやすいことが利点。バイポッドを使って安定した射撃ができます。
そして地面までの距離が近いこともポイント。標的まで「届く・届かない」が正しく判断できますし、浮き上がる弾道が肉眼でも追いやすく、HOP調整が容易に行えます。
必須ではありませんが、伏せ撃ちでゼロインするときはゼロインマットのようにマットタイプのガンケースを用意しておくと便利です。

正しい距離は必ずメジャーで測ること

これから正確なゼロインをしようとするときに、正しい距離が測れないのでは話になりません。

冒頭で述べたように、ゼロインには標的までの距離を正しく把握することが不可欠です。歩幅や歩数、ましてや目測などをアテにしているようでは正しいゼロインなどできるはずがありません。

またひんぱんにゼロインを行う場合は短い巻尺ではめんどうですので、ぜひ50m以上が測れる巻尺を用意しておきましょう。


ゼロインの手順1:その銃で「狙える」最長距離に標的を置く

それではいよいよゼロインの手順に入りましょう。

まずはじめにメジャーを引いたら、その銃で「狙える」最長距離に標的を置きます。「狙える」距離とは、銃口を上に向けたりしなくても十分に届く距離のこと。銃の性能に見合った最長距離にサイトを合わせておけば、それより手前にいる敵は狙える、ということになります。

フォートレスでは銃の性能によって目標距離45~50mを目安にしていますが、このあと行うゼロインで「届かない」と判断したら、適正な距離に設定しなおしましょう。

【コラム】フォートレスではなぜあの1斗缶を標的にするのか?

毎度おなじみの18L缶

フォートレスでは、ゼロインや開発テストでの試射でずっと前から「一斗缶(18L缶)」を使っています。サバゲアワーの動画でもおなじみですね。ではなぜこの缶にこだわっているんでしょうか?

理由のひとつは「当たったことが分かりやすい」こと。命中すればものすごい大きな音が出てくれますし、慣れれば缶に直接命中したか、跳弾かも音の違いで分かりやすく教えてくれます。

そしてもうひとつの理由は「サイズと形が絶妙」なこと。サバゲで狙う敵は人間です。それを狙うのに人間よりも大きな的を使うのは意味がありません。胴体より少し小さくて頭より少し大きい、標的として最適なサイズだと思います。
また長方形という形状も、ゼロインするときに角や辺を使ってサイティングをしっかり決めるのに便利です。


標的に届くようにホップ調整する

※この段階ではまだサイトを合わせる必要はありません。

ゼロインの前に、適正にHOP-UPを調整します。ここでは「標的までちゃんと弾道が届いているか?」「弾道の浮き上がりが大きくないか?」を肉眼で確認しましょう。

もしもどんなにHOPを強くかけても標的まで届かなかったり、届いたとしてもHOPが目一杯かかっている弾道のときは、最初に設定した「狙って当てたい距離」が遠すぎる、ということになります。
無理して遠すぎる目標にしても、サバゲで使えないゼロインは意味がありません。無理せずきれいな弾道で、少し目標を超えるぐらいの距離まで標的を移動しましょう。
ホップ頼みで届くような「無理な距離」だったときは、目標設定を見直しましょう
▲ホップ頼みでギリギリ届くような弾道では、調整しても意味ナシ。銃の性能に見合った距離でゼロインしましょう。

サイトのネジはまず締める

サイトの調整ダイヤルここからいよいよサイト調整に入ります。といってもその前の準備段階です。

DOTサイトでもスコープでも、銃にマウントするときはガタつきがないようにしっかり固定しましょう。ここで固定が甘いと「せっかくゼロイン調整したのにズレて台無し…!」になってしまいます。

サイトをしっかりとマウントしたら、まず行うことは「調整ダイヤルを完全に締めこんでおく」ということ。これから行うゼロインを手早く確実に行うための準備です。上下・左右の各調整ダイヤルは、ネジが止まるまで締めこんでおきましょう。

【コラム】調整ネジを「まず締める」理由とは?

調整ダイヤルは狙点(DOTサイトでは中心の点、スコープではレティクルの中心点)の位置を調整する役割を持つものですが、どれだけ回せばどれぐらい狙点が動くかはサイトによって異なります。また、どちらに回せばどちらを向くか、調整しているうちにわからなくなってくることがあります。

そこでおすすめしたいのが、まずダイヤルを「締め込んだ位置」から始めて、ゆるめながら弾道にあわせていく方法です。こうすると、もっとも弾道とズレた状態から「ゆるめれば弾道に近づく(※)」とわかりやすいので、とても作業が楽になります。

(※)まれに「ゆるめると弾道からもっと離れていく」こともあります。それはすでにマウントにサイトを固定した状態がズレているということです。こうなると、マウントリングにスペーサーを挟むなど、サイトの固定方法を物理的に調整する必要がでてきます。

弾道にあわせて狙点の左右を調整する

弾道と狙点の左右をあわせるさて、サイトのダイヤルを締め込んだことで、いま狙点で標的を狙って撃ってみると、弾道はデタラメな方向を向いていると思います。
そこでまず、弾道の左右の向きを狙点に合わせていきます。

サイトの左右調整ダイヤルを少しずつ「ゆるめて」「撃つ」、「ゆるめて」「撃つ」…をくりかえして、実際の弾道を狙点に近づけていきましょう。

このとき、まだ上下調整は行っていませんので、弾道は狙点に向かっていくとはかぎりません。狙点を通る垂直の線をイメージして、弾道がその線を外れずに飛んでいくように調整すればOKです。

【コラム】ゼロインは「弾道」を「狙点」にあわせること!

よく「標的に当たるように撃ちながら、そこに狙点を近づけるように調整していく」と勘違いする人もいるようですが、それではいつまでたっても正確な狙点調整はできません。そもそもBB弾の着弾点は一発ごとに結果がちがう(バラつく)のに、狙点をどこにあわせればいいのかなど、わかるはずがありません。

ゼロインは、常に「狙点」で標的を狙って撃ち、ズレている「弾道」を「狙点」に近づけるのが鉄則。「狙点を標的に合わせれば、そこにBB弾が飛んでいく」ように調整することがゼロインの目的なのです。

標的に命中するようにサイトの上下を調整する

狙点に命中するように上下を調整する いよいよ標的に命中させるための調整に入ります。

狙点で標的を狙って撃ち、上下調整ダイヤルをゆるめながらサイトの上下を調整します。このとき、着弾点を狙点にあわせる、つまり命中させるようにします。

弾道は、標的に到達する手前では狙点の上に行くこともありますが、今調整している距離で命中させるためのゼロインです。途中の弾道に関係なく、狙点で狙えば標的に命中するように調整しましょう。

このとき標的の角や上辺などを目安にして、狙点は常に同じところに決めて狙うようにします。狙点がぶれると正確なゼロインにならないので注意してください。

【コラム】地面を撃つような状態からスタートすると、低い弾道も手に入る!

多くの光学サイトでは、サイトの上下調整ダイヤルを締め込んだ状態で狙って撃ち始めると、手前の地面を撃つ状態になっている場合がほとんどです。着弾点(着地点)までの距離を徐々に伸ばすようにサイト調整するようにしましょう。

そうすることで、何も無い空間に向かって撃つよりも余計な調整時間がかからないだけでなく、標的までの弾道を低く抑えることができるからです。

つぎに標的を5m手前に移動して調整する

ここからが「フォートレス式ゼロイン」のポイント。さきほどの調整で、ほぼ標的に当たるようになったら、こんどは標的を5m手前に移動して同じように撃ってみましょう。

標的を手前に移動して同じように撃つ
▲標的を手前に移動したら当たらない…!よくあることです。

撃ってみると、さっきよりも手前のはずなのに命中率が下がることがよくあります。これはHOP弾道が当初の距離で合わせた着弾点よりも高いところを通っていて、標的を超えている事が多いからです。

この時もしも命中率が下がったら、この距離で命中するようにゼロインの高さを微調整しましょう。

標的を元に戻して同様に狙って確認する

さて、いま目標の5m手前に移動した標的を使ってゼロインしました。ではもう一度標的を元の距離に戻して同じように狙いましょう。 もちろん標的が遠くなったぶん、元の距離で撃った着弾点は最初の調整よりも標的の低い位置になるはずです。

低くなったとはいえ、標的に着弾していればゼロインは完了です。
しかし、「さっきは命中させられた距離なのにこんどは当たらない」ということがあります。

元の距離に戻したら当たらなくなった?
▲5m手前で調整したら、元の位置に戻すと当たらなくなった?

さっきまで届いたはずの弾道が届かなくなった原因は、ずばり「HOP頼みの弾道だった」ということです。銃の実力以上の距離を狙っているためにHOPを強くかけすぎていることが考えられます。

HOP頼みの弾道は、目標の距離にだけ命中して、その手前では当たらない銃、つまり「ゲーム中に狙っても当てにくい銃」ということになります。

こうなると、銃の実力に合わせた距離に目標を設定しなおして、このページ「手順:その1」からやり直すしかありません。

【コラム】HOP弾道の「浮きしろ」を知っておくと上手く狙える!

エアガン(電動ガン)のHOP弾道は、必ず上がって落ちるものと言ってよいでしょう。ここまでのゼロインを行いながらその銃の弾道を知っておくことで、サイトの狙点だけで狙うほかに、BB弾を当てられる範囲を知ることができます。

たとえば「弾道が狙点よりどれぐらい浮き上がるのか」を覚えておけば、常に弾道が標的の範囲内で飛んでいくように狙えるので、距離さえ届けば確実にヒットする、ということになります。

銃の特性を知ることこそ、ゼロインの目的だ

これでサイト調整としてのゼロインはひととおり完了です。ただし、ゼロインは一度やったら完成というものではありません。

ゼロインの作業を通じて銃の特性をよく知り、撃ち手の感覚を銃にあわせるための作業―それこそがゼロインの本当の目的だといえるかもしれません。

ぜひこれからはゲームの前に、サイティングが信頼できるようになるまで徹底的にゼロインを行うことをおすすめします。そうすればゲーム中のサイティングにも自信がついて、あわてず敵をヒットできるのでサバイバルゲームがもっと楽しくなることでしょう。

正しいゼロインでサバゲをもっと楽しもう